小さな感覚を掬い上げること

ミツバオウレン

最近、久しぶりに息子とのりくらをゆったり歩きました。
「ジョイフルウォークのりくら」というトレイルの一つで、
5時間ほどかけて歩く「三本滝トレイル」を。
新緑に包まれて、最高に気持ちが良く、
歩けて良かった!としみじみと思いました。

「そろそろきっとあれが見頃だからあそこを歩こう」
「きっと今あそこを歩いたら気持ちよさそうだよね」
「今日はあそこに行きたい気分」
と、日ごろどちらからでもなく、
なんとなく場所を決めてちょくちょく歩きに行く私たちなのですが、
今回は、
「最近何か疲れてるかも。たっぷりのりくらを歩きたいね。」
がスタートでした。

歩いていて、息子の足運びと私の足運びの違いに愕然。
体力の有り余る若者との差はみるみる開いていきます。
そして少し前を行く息子の背中を見ていると、ずいぶんと大きくなったものだなぁと。
数年前は、息子のペースを気遣いながら歩いていたのに……!
時の流れは早いものです。

歩きながら、移り住んだその当時のことを思い出していました。


思い返してみると、
乗鞍高原へ移り住んだきっかけは、
息子の様子を見ていて、
「なんだか違うんだよなー」という違和感を
当時の環境や自分自身のあり方に対して抱いたことからでした。

それは当時住んでいた静岡で、
息子が入学予定の小学校へ就学時検診に行った際のこと。
「ここは彼の居場所じゃない気がする」
という思いがむくむくっとわいてきたことを覚えています。

様々なことに対して、納得いく説明のあるなしに関わらず
とりあえず右にならえという圧に従順なのが正しい
ならえないのは間違いだし迷惑
そう誰かがはっきり言った訳ではないけれど、
学校全体を覆っている、こういった暗黙の前提がどうにもしっくりこない。

それは30〜40人学級の児童を束ねる先生からしたら、無理もない前提かもしれません。
でも、
何事も納得できないまま進むことが難しい息子にとって、その環境は窮屈そう。
それに、彼の持っているユニークな個性が
無理にならされてしまいそうで、そうなってしまったとしたら残念だなぁと思ったのです。

もっとのびのびできたらな。
少なくとも、先生や学校に余裕があって、
一人一人の話を聴いてくれたり、伸び代をよく見てくれたらな。
教室内・学校内での学びだけじゃなく
自然のなかでいっぱい遊んで心と体を動かす色んな経験から、育ってくれたらな。
何より、息子がそこにいる自分を好きでいてくれたらいいな。
当時、欲張りにもこんなことを思いました。

そこで思い浮かんだのが、のりくらのこと。
私の弟が、少し前に移住していた場所です。
学校は少人数で先生の目が行き届く環境。
山に近く自然豊かで
四季それぞれに美しく、日々心にゆとりが持てそうなこと。
自然体験がたっぷりできそうなこと。
未知数なこともたくさんあったけれど
のりくらでの生活を想像するとワクワクしました。

合わなかったらその時また考えよう!と
半ば勢いで移り住むことを決めて、早7年が経ちました。
のりくらの小学校に入学した息子もこの春で中学2年生。

今、彼はどんな感じかというと、
「あぁ俺は幸せものだなー」とよく呟いては、
好きなこと(ひょんなことから始めたミュージカル)に
のめりこみ、たまに山歩きで息抜きしつつ
なんだか楽しそうに過ごしている最近です。


ここまで、全てが順風満帆に来たかというと決してそうではなく
周囲の人たちの寛容さにたくさん助けられて今がありますし、
彼自身が抱えている課題は今もたくさんあります(もれなく私も)。


移り住んだからこそ得られる経験もあり、
逆に逃しているかもしれない経験もあり、
移り住んでみて、想像通りなこと・想像以上なこと・想像とは違うこと、
日々直面する目の前の課題や先延ばしにしている課題……。

色んなことがあるなかで、
それでもやっぱり、のりくらに親子で移り住み、
年月を重ねているのは
つまるところ、「なんだか違うんだよなー」の反対側にある
「そうそう、求めているのはきっとこれ」という
私たちが大事にしたい暮らしのフィット感を
のりくらで確かめ、積み重ねる実感を持てているからなのかなぁ
と思ったりしています。ひとつ、またひとつと。

この間のトレイルハイクで息子と一緒に
「歩けて良かった!」
としみじみと感じられたのも、また一つ。
自身の調子の変化に気づいて歩こうと思ったり、
ここを歩こう!と決めて歩き、
その道々を楽しんで
感覚を確かめながら、自分の在りようを自分でチョイスすることの大切さに
改めて気づけたような気がします。

歩くことも暮らすことも、似ているのかもしれない。
景色を楽しみつつ、心地のいいペースをつくり、
驚きや発見とともにフィット感を積み重ねていくところが。
道はあっちにもこっちにもあるけれど、どれが正解というのはなくて、
その時の状況によって選ぶ道はしぼらてきたり、
選べたとして、その選択は自分達にどんな経験をさせてあげたいか……によるところが。
どんな道も、その時の内側の状態・外側の状態によって感じ方が異なるところが。

さて、そろそろ、中2息子は進路を考え始める時期。
息子も私も、暮らす場所や暮らし方など、この先どうなっていくのか……。
見えている所もありつつ、その時になってみないと分からないこともある(笑)。
でもきっと、どんな感情の中にも道しるべがあると信じて、
小さな感覚を掬い上げてその時々で味わいきり、選択して進んでいきたいなぁと。

というわけで、
まずはこのグリーンシーズンも、たっくさんのりくらを歩きたいなぁと
私の心が呟いております!

ジョイフルウォークのりくらトレイルマップ
昨年制作を担当させてもらったジョイフルウォークのりくらのトレイルマップ。トレイル整備への応援も兼ねて散策のお供にぜひ。

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